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無常 執着を手放す   (2018-, 制作中 )

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 生きていくとは、何と深い精神的な苦しみを伴うものなのだろうか。その苦しみは、他人への羨望や嫉妬、大切な人との別れ、裏切りや復讐、根拠のない中傷など、感情的な執着や人間関係のもつれから生まれる。

​ 苦しみから解放されたいと願ったとき、人は気づく。救いへの道は、執着しているものを手放し、前に進むことしかないのだと。

  ギリシャの哲学者エピクテトスはこう語っている。「人生において価値ある唯一の目標は自由である。そしてそれは、自分の手に負えないものを手放すことで得られる」。この言葉は、苦しみの本質を突いている。私たちは、どうにもならないものに執着することで、苦しみを生み出しているのだ。手放すことは弱さではなく、むしろ最初の一歩となる強さなのだ。

  やがて時が、癒しをもたらしてくれるだろう。歴史は語る。成功や失敗、人間関係、そして生命でさえ、常に変わり続け、永遠ではないと。これこそが、日本人の美意識の根底にある「無常感」の本質である。

  無常感とは、執着を捨て、変化を受け入れて歩むための静かな覚悟である。それによって心の平穏がもたらされ、私たちはようやく、移ろう瞬間ごとの美しさに気づき、味わうことができるのだ。

* 作品 muj01, muj07, muj11 はロシア国立プーシキン美術館に永久収蔵されました。

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