Simple & Minimal
(2018)
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私は表現の自由を追求したい。絵画は描きたいものだけを描き、いらないものは描写しない。それを写真作品で実現する。なぜならリアリティによって人の自由な想像力を阻害したくないからである。見る人の自由な発想を掻き立てるような表現が私が目指す理想だ。
最近、生活に疲れ、生きていることが辛いと思う人が多いと私は感じる。私はそのような人々の心に響くような作品が作りたい。そのためには作品を見る人に想像する力を取り戻してもらうことが必要だ。リアリティは人間の想像力の邪魔をする。だから私の作品は写真でありながらリアリティを排除し、浮世絵のようなシンプルな表現にした。この作品は、生きていることが辛いと思っている人が、夢の中で少しづつ前向きになっていく自分を見るという物語である。見る人が自由に想像して欲しい。
蓮の枯葉 生きていることが辛いと思うことはないだろうか。 枯れた蓮はまるで自分を見るようだ。
石仏群 この石像には一千年ほど前の人々の思いが詰まっている。 いまそれぞれの思いを私達は知る事は出来ない。
古城 この城は約400年前の日本の最高権力者が建てた日本一の城だった。 権力は決して続かない。今は松が一本あるのみである。
蝉 蝉は十年あまりの一生の最後の夏を晴れの姿で恋をして、やがて死ぬ。
花火 花火は希望に満ちていた私の小さい頃の思い出とともに 湧き上がるように空に開き、消える。
雲と水と人々 雲や水や人々はひとときも同じではない。 人々は人生の修行の旅をさまよう。
石仏(十一面観音) 人のあらゆる願いを叶えるというこの石の仏は どれほど多くの人の哀しみを受け止めてきたのだろう。
奇跡の一本松(岩手) 2011年に発生した東日本大震災の海岸で津波から唯一生き残った 松に人々は鎮魂と回復の思いをはせる。
加茂の水 京都では権力争いにより多くの血が流れた。 川は人の争いも欲望も悲しみも洗い流していく。
曼珠沙華 曼珠沙華は悲しい思い出に終止符を打ち、 自分の心と向き合わせて人の心を癒すと言われる。
老桜 老いた桜は今年も華々しく咲き誇り、そして散る。 来年もまた美しい花を見せてくれるに違いない。
蓮の花 一度枯れた蓮も、泥の中から気高く美しい花を咲かせる。